三鷹ストーカー殺人事件とは
三鷹市に住む女子高生でタレントの沙彩さんが、自宅に忍び込み待ち伏せしていた元交際相手に刺され、搬送先の病院で亡くなったストーカー殺人事件。
被害者の沙彩さんがテレビドラマなどにも出演するタレントであったことや、容疑者の元交際相手が被害者である沙彩さんの裸の画像などをネットに流出させたことでも社会に大きな波紋を投げかけた事件。
事件概要
平成25年10月8日、午後4時55分頃、東京都三鷹市井の頭1丁目の路上で「女の人が刺されている」と110番通報をもとに三鷹警察署員が駆けつけると首から血を流し、自宅前の路上に倒れている鈴木沙彩さん(18歳)を発見。
私立高3年生で18歳の沙彩さんは制服を着用していた。直ちに病院に搬送されたが約2時間後に死亡が確認された。
犯行に至る過程
平成23年、被害者の鈴木沙彩さんと容疑者の池永チャーチルトーマス(以下、トーマス容疑者)はインターネット・ソーシャルネットワーキング・サービス、いわゆるSNSを通じて出会い交際が始まるが、この時トーマス容疑者は大学生と偽っていた。
トーマス容疑者が度々上京しながらの交際であったが、翌平成24年の9月、海外留学を前にした沙彩さんはトーマス容疑者に別れを告げる。
沙彩さんが帰国した平成25年3月、トーマス容疑者が復縁を迫るがこれを断ったことからストーカー行為は始まった。
「写真を送れ、送らないと俺は死ぬ」、4月には「自分と付き合わないと、交際していた時の写真を(沙彩さんの所属している芸能事務所などに)配る」といった内容をフェイスブックに書き込むなどしていたことがわかっている。
6月には沙彩さんの父親がトーマス容疑者に連絡をしないように伝えていましたが、9月末になるとトーマス容疑者は自宅のある関西から夜行バスで上京。JR吉祥寺駅近くの量販店で刃渡り15cmのナイフを購入。10月1日、4日には、沙彩さんの登校時間を狙って自宅付近で待ち伏せをする。
この頃、沙彩さんはトーマス容疑者から「殺す」というメールでも脅されいることもあり学校に2回相談している。
こういった状況に不安を感じた沙織さんは8日の午前中、ご両親とともに三鷹警察署を訪れ相談。三鷹署は警告のためトーマス容疑者に3回電話したが繋がらなかったため、留守番電話に警察に連絡する旨を残したという。
事件が起きたのはその日の午後でした。
トーマス容疑者は昼頃に沙織さん宅に侵入し、沙彩さんの部屋のクローゼットに身を隠す。
帰宅した紗彩さんは隠れていたトーマス容疑者に襲われ、外まで逃げだしましたが自宅前の路上で首や腹などの数カ所にわたって刺され、通報を受けた警察や救急が駆けつけ、紗彩さんは病院に搬送される。
午後6時半ころ、付近の捜査していた三鷹署員が三鷹市牟礼3丁目の路上で現場から逃げた男とよく似たトーマス容疑者を発見し殺人未遂容疑で逮捕。
それから間もなく午後7時頃、搬送されていた病院で沙彩さんの死亡が確認された。
10月29日、東京地検立川支部はトーマス容疑者を殺人、銃刀法違反、住居侵入罪で東京地裁立川支部へ起訴。
事件後
事件後、事件の残虐性もさる事ながらトーマス容疑者がインターネットに流出させた裸の画像が大きな波紋を広げた。今回流出したものは二人が交際している時に撮影された、あくまでも当時の二人の間だけのプライートな写真。
このような卑劣極まりない復讐行為を「リベンジポルノ」といって、アメリカなどでは州によって法整備されていますが、今のところ日本では「リベンジポルノ」を直接的に規制する法律はなく他の刑法で対応せざるを得ない状況です。
(詳しくは当サイトの「ストーカーとは」で解説しています)
殺人という残忍な行為だけでなく、一度世に放たれると一気に拡散し、完全に消し去るととは不可能に近いインターネットという場に、自分の裸の写真を撒かれるということは女性にとってどれほどのことかは想像を絶します。もちろん、亡くなった紗彩さんばかりか、残されたご両親の心中は計り知れません。
事件後しばらくの間は、この事件について検索すると画像のことばかり。ネット社会の怖さを痛感しました。そもそもインターネットのSNSを通じて知り合ったのがきっかけの事件。インターネットが悪いものとは思いませんが、車と同じで使い方を間違いと恐ろしい凶器になること、そしてそれを利用する多くの人達がいつ巻き込まれるかわからないことを感じた事件ではないでしょうか。
ひとつだけ感心したことはテレビなどの報道各社。職業柄とはいえ、常にセンセーショナルなニュースを求め、報道の自由や知る権利を盾に時には行き過ぎな取材や報道も少なからずある中、この画像流出の部分については簡単に事実伝えた程度であったことは少しだけほっとしました。
事件から約三ヶ月が経過した12月6日、警視庁は相談を受けていた三鷹署のストーカー相談に対する対応の検証結果の報告書をまとめ、「危険性の判断に問題があった」などと総括した。
沙彩さんが事件当日に三鷹署へ相談に対する対応について、担当者の危険性の判断に問題があったなどと認め、「(危険性を)組織的に判断して評価していくことが必要」と指摘。また、相談を受けた後も他の相談案件5件を抱え、上司に報告していなかった点にも言明し「上司に口頭で速報する仕組みが必要」と組織的な対応の不備も認めた。
「事件に至る過程」であるように、「写真を送れ、送らないと俺は死ぬ」、4月には「自分と付き合わないと、交際していた時の写真を(沙彩さんの所属している芸能事務所などに)配る」といった言動や確認できだけでも2回の待ち伏せ、それも関西に九十している容疑者が東京まで来ているといった状態。事件当日三鷹署に相談に訪れた紗彩さんがここまで説明してもなお、「危険が差し迫っている状態ではない」と判断するのであれば、何をもって危険なのか。
ストーカー規制法はもちろんのこと、脅迫罪などに該当する疑いもあります。
三鷹署は、トーマス容疑者に警告するために3回電話したが繋がらなかったため、留守番電話に警察に電話するように残したというが、そういう問題だろうか?
繋がらないことは警察が悪いわけではないが、結果として何もできていないのだから他の対応を釣るべきことは明らか。それは決して「留守番電話にメッセージ」といった安易なことではないはず。
そもそも、ストーカー行為に及んでいる人物は往々にして自身の感情や間違った正義感など、常識から逸脱した思いで行動することを鑑みれば、火に油を注ぐことにもなりかねないことは、この報道を聞いた多くの方が感じたことでしょう。
ストーカーによる殺人事件多くは、警察が適切な対応をしていれば防げることができた事件です。
桶川ストカー事件をきっかけに、ストーカーという犯罪が世に認知され、不完全とはいえ法整備も進み、警察が対応できる状態になっているにも関わらず凄惨なストーカー事件がなくならないのはこういった警察のストーカーに対する認識の甘さと言われてもやむを得ないことでしょう。
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