長崎ストーカー殺人事件とは

平成23年12月に長崎で発生したストーカー殺人事件で、元交際相手本人ではなく、そのの母と祖母が殺害された凄惨な事件です。

長崎ストーカー 警察不信gifさらに、ストーカー被害の相談を受けていた千葉県警が被害届を受理せずに慰安旅行に行っていた事実が発覚したことで、平成11年に発生した「桶川ストーカー殺人事件」を彷彿させる警察への不信感が社会問題となった事件。

また、当時の「ストーカー規制法」では、つきまとい等に対する警告や命令は被害者の居住地の警察のみに限定されていたことから、居住する千葉県から実家のある九州に逃げていた被害者が、届けのために何度も千葉まで出向かざるを得なかったことなども"被害を食い止められなかった要因"の一つとして問題となり、平成25年6月の「ストーカー規制法改正」のきっかけとなった事件です。


事件概要


長崎ストーカー殺人事件現場gif平成23年12月26日。

長崎県西海市の山下誠さん(58)方で、午後9時前に帰宅した誠さんの次男(18)が、家に明かりがなく居間の窓ガラスが割られているのを見つけ、三女と東京にいた誠さんに電話で伝える。

誠さんが西海署に通報するとともに、次男は近所の親類と一緒に2人を探したところ、敷地内のワゴン車の荷台から妻の美都子さん(当時56歳)と母の久江さん(同77歳)が刺殺されていた。


犯行に至る過程

平成23年2月下旬、三女と筒井郷太容疑者(27)が交際を始める。

筒井郷太 gif同年9月から10月には三女が筒井から暴力を受け、事実上の監禁状態となる。尚、この時の暴力は後に被害届を提出している。

10月29日に父・誠さんが長崎・千葉の両県警に相談、翌30日には三女の部屋に三女の親族、同僚と習志野署員2人が突入して三女を保護。
誠さんが自宅に三女を連れて帰ることとなる。

署員は筒井容疑者を任意同行し「二度と近づかない」との誓約書を書かせ、厳重注意だけで帰すが、翌31日には筒井から三女に脅迫メールが届いている。


11月に入り長崎県警西海署に障害の被害届けを出したいと相談するが、事件の起こった警察署にするように言われたため千葉県警習志野署に電話で相談。

11月中旬には筒井が三女の知人などに「三女の連絡先を教えなかれば周囲の人を殺して取り戻す」といった脅迫メールを送ったことから、西海署と習志野署に相談するがいずれも「被害者の所在地の警察署に相談をするように回答」

また、三重県警桑名署に脅迫メールを伝え筒井の実家巡回を求めるが、同署は「西海、習志野署に確認する」と回答したのみで以後連絡ない。


12月に入り三女が習志野署に被害届を出したいと電話相談。

12月6日に三女と誠さんが習志野警察署を訪れるが、電話ではいつでもいいと言っていたにもかかわらず、刑事課が一人も空いていないので1週間待つように回答。

これがこの事件で後に大きな波紋を投げかけた。


ストーカー事件 慰安旅行gif

なんと、「被害届の提出は一週間待ってほしい」と伝えたあとの、12月8日から10日まで、ストーカー事件の責任者だった生活安全課の課長や、父親に「被害届の提出を待ってほしい」と伝えた刑事課の係長など12人が、北海道に慰安旅行に行っていたことが後に発覚。

しかも、この旅行期間中の9日未明に三女宅もチャイムを鳴らしたりベランダを叩く音がしたことから習志野署に通報するが、「顔は確認したのか?」「逮捕はできない」として帰ってしまったほか、この後、三女宅前をうろつく筒井に職務質問するが、捜査を先送りにして事情聴取も済んでいなかったことから逮捕は難しいとして、両親に連れて帰るように指示をするにとどまっている。


千葉県警 謝罪会見gif後に県警は慰安旅行に行った担当者が事件の切迫性を認識して対応していればより踏み込んだ対応ができた筈だったと、旅行が捜査に与えた影響を認めて記者会見で謝罪するが謝って済む問題ではない。


12月16日午後6時ごろ、誠さん方離れの窓ガラスを割って侵入、久江さんの胸や腹を包丁で数回刺して殺害し、更に同20分ごろ母屋の窓ガラスを割って入り、美都子さんを包丁で十数回刺して殺害。死因はいずれも失血死だった。


犯行後

事件翌日の17日午前、警察は筒井容疑者を長崎市内のホテルで見つけ、任意同行。

この時、筒井容疑者が所持していたウエストポーチの中に包丁2本が入っていたことからこれが凶器とみられた。

筒井郷太 送検gif事件当時の精神状態を調べる鑑定留置の結果などを踏まえ、刑事責任が問えると判断した長崎地検は26日、三重県桑名市、無職、筒井郷太容疑者(27)を殺人、住居侵入、窃盗などの罪で長崎地裁に起訴した。

さらに、5月21日には殺害された山下美都子さん(当時56歳)の三女(23)に暴力を振るい、負傷させた疑いも強まったとして傷害容疑、6月1日には三女の姉ら8人に脅迫メールを送った脅迫罪でそれぞれ追起訴された。

第一審

裁判イメージ 平成25年6月14日長崎地裁で開かれました。

第4回公判では三女が証人尋問で出廷し、「死刑でも足りない。家族を殺すと言われていたので、死ぬことも逃げることもできなかった」と涙ながらに訴えた。
また、同居を始めるとすぐに暴力を振るわれるようになり「鉄亜鈴やコップで殴るなどひどかった」といった状況や、「雑貨売り場で男性客を接客する時は、携帯電話を通話状態のままにさせられていた」などと職場にいるときでさえも拘束されていたことなどを明かした。

被告は裁判で「警察官に自白を強要された」とし、無罪を主張していましたが、重富裁判長は「自白は具体的かつ詳細で信用できる。公判での供述は信用できない」として、2人の殺害を被告の犯行と認定し「何の落ち度もない2人の命を理不尽に奪い、結果は重大」として求刑通り死刑を言い渡されました。

被告側は判決を不服とし控訴中です。


ストーカー規制法が施行されたことによって、警察が積極的にストーカー事案に対して介入できるような法整備がなされてもなお、警察の体質が変わることなく、凄惨なストーカー事件を食い止めることができなかった衝撃的な事件として知られています。




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